交通費や宿泊費とは別で、出張者に対する慰労などの意味を込めて支給される出張手当。支給が法律で義務付けられているわけではありませんが、支給額を全額損金に算入できるなどのメリットがあることから、国内の大半の企業では出張手当を支給しています。
ここでは、出張手当の概要や特徴、メリット・デメリットなどを詳しくご紹介しています。
出張手当とは、出張者に対して通常給与や清算経費とは別で支払われる手当のこと。会社によっては、「出張日当」「日当」「宿泊手当」などと呼ぶ場合もありますが、いずれも同じ趣旨の手当になります。出張手当の金額等に法的な決まりはなく、基本的には各企業で自由に出張手当を設定することが可能です。
出張手当の趣旨は、出張に伴って発生する諸雑費の補填(食費など)、また出張先に赴く社員への慰労。いつものオフィスに出勤する時とは異なり、出張中は金銭的・肉体的・精神的負担が大きいことから、それら負担に対する「会社からの気持ち」を出張手当という形で支給しています。
なお、出張手当と混同されがちな言葉に「出張経費」がありますが、出張経費には「会社からの気持ち」というニュアンスはなく、単純に出張にかかった実費となります。具体的には、出張先に移動するための交通費、現地での宿泊費などです。
産労総合研究所による「2019年度 国内・海外出張旅費に関する調査」(※)によると、アンケート調査の対象となった会社のうち、出張手当を支給している会社が全体の91.2%に上っています。内訳を見ると、従業員数が1,000人以上の会社においては実に100%、従業員数299人以下の会社においても89.4%が出張手当を支給しています。
出張から帰社後、経費精算で交通費や宿泊費などを請求したことがある方も多いと思いますが、出張手当は経費精算とは別で支給されるものです。すでに日本企業の文化としても定着している感があるので、きっとあなたの会社でも出張手当の制度が存在しているのではないでしょうか。
経費精算による交通費や宿泊費の支給分については、会社にとっての旅費交通費(経費)になることは想像できるかと思います。
一方で出張手当については、必ずしも実費として発生したお金とは限らないため、旅費交通費ではなく給与の区分になるのではと考える方がいるかもしれません。
ところが出張手当は、制度上、全額が旅費交通費として区分されます。たとえ出張者が全く出張手当を使わずに帰社したとしても、旅費交通費としての取り扱いです。
旅費交通費は、いわゆる経費の一つ。詳しくは後述しますが、経費である以上は会社にとって節税につながります。支給された社員にとっても非課税の対象となります。
出張者としては、給与とは別で出張手当が支給されることにはメリット以外にありません。一方で会社にとっては、節税につながるとは言っても支出が生じることは確かなので、出張手当の支給にあまり前向きではない会社もあるのではないでしょうか。
しかしながら出張手当は、出張者に対する慰労の気持ちが趣旨なので、さほど高額ではありません。多くの会社にとって、この程度ならば支給して当然、と納得できる金額です。
参考までに1人1日あたりの出張手当の相場は、一般社員が2,355円、課長クラスが2,711円、部長クラスが2,900円、取締役が3,802円、社長が4,598円(※)。意外に低いことが分かるでしょう。
会社が社員に支給した出張手当は、全額会社の損金に算入することができます。これにより会社の所得を圧縮することができるため、法人税の節税効果が生まれます。
また「国内出張」に対して支給される出張手当については、課税仕入れとして処理できることから、消費税の節税効果が生まれます。
さらに、出張手当は社会保険の算定基礎には含まれないことから、出張手当を社員に支給しても社会保険料が増額されることはありません。
会社から社員に支給された出張手当は、給与扱いにはなりません。そのため、給与の額に連動して上下する所得税や社会保険料、住民税などには影響しません。出張手当の額がそのまま手取りとして加算される、ということです。
出張手当を支給することは、会社にとっても社員にとってもメリットがあります。
出張手当の設定や金額は会社の自由となっているため、中には出張手当が存在しない会社もあります。
しかしながら、一般に出張は、通常勤務に比べて金銭的・肉体的・精神的負担が大きいものです。これらの負担を補填する会社からの誠意がなければ、社員は出張へのモチベーションが下がっていくかもしれません。
出張は、会社業績を大きく左右しかねない大事な仕事です。出張者のモチベーションを維持させるためにも、出張手当の支給は大事な要素となることでしょう。
出張手当に関する規定は、会社が作成する「出張旅費規程」の中の一部となります。そのため、出張手当の部分だけを切り取って規定することはできず、「出張旅費規程」の全体を整備する中で出張手当も規定していくこととなります。
「出張旅費規程」とは、出張手当以外にも、交通費や宿泊費、接待交際費、その他出張に関連する様々な取り決めの総称です。規定内容に法的な決まりはありませんが、作成後は労働基準監督署に提出する必要があることから、労務や税務の専門家も交えながら作成していくことになるでしょう。
手間と時間のかかる「出張旅費規程」を作成しなければならないことは、会社にとってデメリットの一つかもしれません。
出張手当が節税対策につながるとは言え、支出を上回る節税効果を得られたら税制が本末転倒してしまいます。会社にとっては、出張手当を支出すればするほど出費がかさむことは、言うまでもありません。
ただし、一般に出張手当は1人1日3,000円程度。社員全体のモチベーション向上に貢献すると考えれば、決して高い出費とは言えないのではないでしょうか?
原則として全額損金に算入できる出張手当ですが、中にはこの制度を悪用し、極端な節税効果を狙ってくる会社があるかもしれません。たとえば、家族経営の小規模な会社において、家族旅行の費用を出張旅費に充てる場合などです。
そのため、社会通念に照らした常識的な額を超える出張手当については、税務調査で脱税を疑われる可能性があります。仮に意図的な脱税と認定されれば、追徴課税や延滞税の納付を命じられることがあります。
出張手当の概要や特徴、メリット・デメリットなどを詳しくご紹介しました。
出張者への肉体的・精神的負担への慰労、また諸雑費の補填などを趣旨に支給される出張手当。出張者にとっては、ちょっとしたお小遣いのようなものですが、会社から支給されるこの小さな「気持ち」があるかないかで、社員の出張へのモチベーション、ひいては社員の会社への忠誠心が変わってくるのではないでしょうか?
会社にとっては節税効果にもつながる出張手当。まだ制度を導入していない会社は、ぜひ早急に導入を検討してみることをおすすめします。
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